定期建物賃貸借契約

定期建物賃貸借契約(定期借家、定借)とは

 建物の賃貸借契約には、通常の建物賃貸借契約とは異なる、定期建物賃貸借契約という契約形態があります。「定期借家契約」と呼んだり、「定借(ていしゃく)」と呼んだりします。

 これは、定められた期間が終わるときに更新がない契約のことです。名称こそ「定期」となっていますが、期間が定められているのは他の借家契約も同じで、むしろ「更新がない」点が重要です。

普通借家契約の継続性(更新)

 普通の建物賃貸借契約(普通借家契約)にも、通常は期間が定められています。一般的な契約では2年間か3年間という長さが多いです。

 しかし、2年間の契約だからといって、必ずしも2年後に部屋を明け渡さないといけない、というわけではありません。更新するかどうかは、借家人が自由に決められることが多いです。

 これは法律上にも規定があり、普通の借家契約で家主が更新をしない(更新拒絶する)ためには、正当な事由(正当事由)が必要とされています(借地借家法28条)。しかも、「自分が住みたいから」など、理由があればなんでもよいわけではありません。具体的で重要な理由が必要な上、併せて一定額の立退料の支払も求められることが多いです。

 裁判においても、入居者は保護され、家主には厳しい判断がなされる傾向にあります。

 家主としては、普通の賃貸借契約の場合、借家人が自ら出ていくまで継続する、との認識を持っていた方がよいことになります。

定期借家契約の目的

 普通の賃貸借契約では、借家人がいつ退去するか判りませんし、どうしても退去してもらいたいという場合には立退料や裁判などの金銭的、時間的な負担が大きくなります。

 そこで、一定の期間の後に退去してもらう必要があると判っている場合(自己利用や、建替など)は、入居する際に、定期借家契約の形にすべきです。当初の契約期間が終了した場合に、相手に退去を強制することができます。

 裁判所の借家人保護の姿勢などを目にする機会が多い弁護士としては、将来的な利用方法がはっきりしない場合でも、定期借家契約を結んでおくことがよいように思います。

 さらにいえば、将来的な利用方法がはっきりしない場合でも、定期借家契約にしておくことで、選択肢を確保できます。したがって、「いつまででも長く住んでもらいたい」という場合でない限り、定期借家契約を積極的に活用することをお勧めします。

定期借家契約の手続、特徴

 定期借家契約の締結には特別な手続が必要です。

 まず、契約時の手続ですが、定期借家契約であることを契約書などの書面(必ずしも公正証書でなくてもよいです。)に明記した上で、さらに、「更新がないこと」「期間満了により終了すること」を記載した文書を、別途準備して相手に交付し、説明しなければならない、ということです(借地借家法38条)。

 次に、終了時の手続ですが、期間満了の半年以上前(かつ1年前より後)に、契約が終了することを通知しておかないといけません。

 このように定期借家契約の手続は特殊です。そしてこうした手続に不備があると、定期借家ではなく、普通借家とされてしまう場合があります。そこで、初めて定期借家契約を結ぶ場合や、自信がない場合は、弁護士などの法律の専門家に相談するか、経験の豊富な不動産仲介業者に書式等の準備をしてもらうことをお勧めします。

 なお、定期借家の家賃は、通常より安く設定されます。入居者からすると、退去期限が自分の都合で延ばせないという点が普通借家契約に比べて不利なためです。期間にもよりますが、普通借家の相場に比べると、概ね1割から2割程度安い例が多いようです。

 建物を貸す際には、是非、定期借家の活用を検討していただきたいと思います。

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