賃貸借契約の無催告解除特約

特約

 賃貸借などの契約を締結する場合、その契約の一般的なルールとは異なる約束をすることがあります。そうした特別な約束を特約といい、契約書の最後に特約一覧の形でまとめる場合もありますし、契約書の関連箇所を修正したり、追加したりする場合もあります。

 どのような約束をするかは基本的には自由ですので、双方の合意さえあれば、契約にどのような特約を付けてもかまいません。

 しかし、契約の種類によっては、特約は何でもよいということではなく、一定の制限がかかっている場合があります。不動産賃貸借も、その特殊性から、特約には制限が課せられています。法律で明確に定められた制限もありますし、明文では規制がなくても、裁判例などから解釈上、制限されていると考えられるものもあります。

解除の原則(民法)

 契約を解除方法は、法律で定められています。一般的なやり方は、民法541条の「催告による解除」というものです。

 これは、相手が契約上の義務を履行しない場合に、「相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときに」解除ができるというものです。

 不動産賃貸における家賃支払の場合で考えると、滞納が生じた後に「○月○日までに支払ってください」と伝えて、その期限が過ぎたら解除できるということです。一度は催告(催促)して支払のチャンスを与える必要があるということです。 

無催告解除特約

 無催告解除特約、と呼ばれる特約があります。これは読んで字のごとく、「催告なしで解除できるという特別な約束」です。

第○条 賃借人が、賃料の支払を2ヶ月分以上怠った場合、賃貸人は何等の通知催告を要せず、本契約を解除することができる。

 民法では通常は催告をして相当期間(5日とか1週間とか)の経過後でなければ解除できませんが、その催告を要しないということです。

 不動産賃貸の家賃支払義務をこれに当てはめると、家賃が遅れているときに、「契約は解除しました、出ていってください」とすることができるという特約です。本来なら必要な「家賃が遅れていますよ、○月○日までに必ず払ってくださいね」という催告が要らないということです。

不動産賃貸借における無催告解除特約の有効性

 特約の有効性を考える場合、大きく3つがあります。①有効、②有効だが解釈上あるいは適用上の制限を受ける、③無効。

 ①有効な場合は、そのまま適用すればよいです。③無効な場合というのは、他の法令や公序良俗に反しているなどの理由で、その特約の効力を認めないので、特約がないことと同じです。

 そして、不動産賃貸借における無催告特約は上記の②に当たります。
 判例によると、「催告をしなくても不合理とは認められない事情がある場合」に限って無催告解除ができる特約、として有効とされています(最判S43.11.21民集22.12.2741)。
 わかったようでわからない表現です。こうしたトートロジカルな表現を裁判所はよく使いますが、結局は経緯(滞納の金額や期間、その他の契約違反の有無、連絡状況など)を総合的に判断して、解除の有効性を決める、ということです。

 結果的に、いざ裁判になった場合に解除の有効性が裁判所の判断に委ねられては困りますので、特約の存否に関わらず、催告が可能な場合は催告を行っておく、というのが現実的な対応となります。

 

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