賃貸借契約の違約条項

定型の契約書

 賃貸借契約を結ぶ場合、多くは不動産業者の用意した契約書をそのまま利用すると思います。

 あるいは、自ら準備する場合であっても、書店等で購入可能な定型の書式を利用することはあっても、自分で全部作成する方はほとんどいないでしょう。

 定型の書式等での契約は、過不足なく記載があり安心ですが、必ずしも賃貸人に有利な条項ばかりではありません。内容もよく確認する必要があります。

賃貸人が是非とも入れたい違約条項

 賃貸人として、入れておきたい違約条項は次の通りです。

  • 賃料等の遅延損害金は年14.6%にする
  • 契約終了後の明渡遅延については、賃料倍額の損害金とする

 これらは、いずれも有効と考えられており、家賃滞納や契約違反、そして契約解除後の明渡しに際して、非常に効果的な条項です。

賃料等の遅延損害金は年14.6%

 本来、特に利率を定めない場合、遅延損害金は民法の法定利率に従いますので、年3%となります。それでも昨今の低金利の世の中では高い方ですが、これを14.6%とすれば、相手に対するプレッシャーとなります。

 なお、消費者契約法において、消費者が相手の場合は年14.6%を超える損害金の定めは、その超過部分が無効とされています(消費者契約法9条2項)。

 入居者が消費者に当たらない場合(法人や団体、あるいは個人事業者)であれば、年14.6%を越える定めも有効ですが、少なくとも年14.6%に設定しておくのがよいでしょう。

 なお、年利14.6%というのは、日歩4銭(1日当たり100円に対し0.04円→365日で14.6円)が由来のようです。

明渡遅延の場合は賃料倍額の損害金

 賃貸借契約書のうち、約半数くらいの印象ですが、契約が終了した後に明け渡さない場合、ペナルティとして賃料の倍額の損害金を支払う義務がある、とする条項があります。

 この条項は、賃貸借契約書の条項の中でも非常に重要な条項の一つです。

 内容は簡単で、契約が終了しても明け渡さなければ、家賃の倍の支払を求めるものです。具体的には、家賃が6万円の物件であれば、契約終了後に退去が遅れた場合、毎月12万円を支払うことになります。
 家賃滞納のみならず、契約違反等でも適用されます。消費者契約法上、問題ないかという点はこれまで裁判でも争われていますが、裁判所の判断としては、倍額程度であれば問題ない(有効)とするものが多いです。

 実際、明渡義務があるのに従わない相手を追い出すためには、家主は相当の労力を強いられます。
 弁護士費用もそうですし、訴訟、強制執行の実費も、時に数十万円になります。

 そこで、高額の損害金の定めにより、相手に早期退去を促すことができますし、弁護士費用などの法的には請求が難しい費用についてカバーすることが可能です。
 相手に資力がなければ回収が難しい場合もありますが、連帯保証人等からの回収の可能性もあります。こうした違約条項は、入れておくと、いざというときに非常に効果的です。

その他の条項

 賃貸借契約書においては、上記の違約条項の他にも、是非、検討したいものとして、自動更新条項、緊急時の立入りの条項、解約予告期間の定め、合意管轄の条項、クリーニング費用の特約などがあり、必要に応じて内容を吟味することをお勧めします。

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