音信不通の借家人の明渡し例

概要

 本件は、練馬区内の駅前マンションの例です。
 借家人は家主の知人で、契約内容について口約束だけで契約書はありませんでした。賃料は初めの1ヶ月分のみ支払いがあり、その後は1年以上、支払いがありませんでした。家主は、第一に明渡しをご希望でした。
 電話・メール・手紙にも応答はなく、直接の訪問でも何の応答も反応もありません。カーテンもいつも閉まっていました。
 当初不在かと思われたものの、現地調査の結果、夜間の灯りから居住が確認でき、訴訟を経て、無事明渡しにいたった事例です。

賃貸借契約

地域練馬区
家賃40,000円(1年4ヶ月分滞納)
状況電話・メール・手紙・直接訪問も応答なし
備考借家人は元交際相手。契約書等なし

経緯

2020年04月末家賃の支払がわずか1回のみでなされなくなる。
2021年10月18日ご相談・ご依頼(オンライン面談)
2021年10月20日借家人に内容証明郵便を発送(催告及び解除通知)
提訴準備(印紙発注・切手準備・訴状等作成・証拠書類等準備・住民票等確認)
2021年10月26日東京地裁に提訴
2021年10月27日現地訪問(不在)
2021年11月22日裁判所から訴状不送達の連絡あり
住民票上の住所が異なっていたため、住民票住所への送達をお願いする
2021年12月06日裁判所から訴状不送達の連絡あり
借家の現地調査を命じられる
2021年12月14日現地訪問・調査(訪問に応答ないものの、照明の点灯を確認)
調査報告とともに付郵便送達の方法を裁判所に上申
2022年01月14日第一回口頭弁論期日(不出頭。結審)
2022年01月21日判決言渡し
明渡しの強制執行申立ての準備開始(申立書等作成など)
2022年02月07日東京地裁執行官室宛てに明渡し強制執行申立て
2022年02月28日1回目の強制執行(催告期日。不在も、生活の痕跡あり)
2022年03月17日現地訪問(おそらく在室するも応答なし)
2022年03月24日現地訪問(おそらく在室するも応答なし)
訪問前に照明点灯を確認。訪問時は室内から物音あり。訪問後は消灯を確認
2022年03月28日2回目の強制執行(断行期日)。借家人から突然電話があり、「コロナに罹患した者がいる」などとするも、明渡し実施。明渡し完了
2022年03月31日借家人から家主に対して直接の入金を確認

経過

 弁護士による数回の現地訪問にもかかわらず、結局、訴訟終了まで連絡が取れませんでした。
 しかし、在室が推測できたため、裁判は速やかに進行しました(通常よりも1ヶ月程度長めにかかりました)。
 強制執行も粛々と行ったところ、居座っていた借家人は「海外から戻ってきたばかりで成田近辺にいるため今日は行けない」「今借家にいる同居人はコロナ感染者だ」などと述べていましたが、根拠も薄弱であったため、明渡し実施には影響ありませんでした。実際に借家人のみが在室したことから、虚偽の言い分であったと思われます。
 退去と前後して、借家人からは100万円を回収しました。

ポイント

 本件のように、居留守などで借家人の対応が見込めない場合や、実際に夜逃げ等により行方が判らない場合であっても、裁判も強制執行も可能です。
 もっとも、書類の送付や意思表示(通知)上の問題が生じる場合もあり、十分な知識・準備がないと、必要以上に時間を要することがあります。その場合、滞納額も膨らみ、回収が難しい相手の場合は損害の拡大につながります。
 早期解決のためには、滞納額が大きくなる前(遅くとも2ヶ月滞納時)には、ご相談頂くことをお勧めします。

弁護士の活動・費用

解決までの期間明渡しまで相談から5ヶ月(回収もほぼ同時)
回収金額1,000,000円(滞納分は全額回収)
弁護士費用671,000円
(内容証明1.1万円、訴訟着手・明渡着手各11万円、明渡報酬22万円、回収額の22%)
実費627,713円
(実費42,278円、明渡申立費用66,090円、強制執行費用519,345円(補助業者への撤去作業・保管・処分費用を含む))

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