借上げ社宅の明渡し例

概要

 本件は静岡県三島市内の借上げ社宅です。
 依頼人は全国展開している会社で、従業員のために支店各地の集合住宅などを一棟借上げ、当地に赴任された従業員の住居として提供していました。

 会社と従業員の間では賃貸借契約(転貸借契約)を結んでいました。従業員が離職すると、社宅を利用することはできませんので当該契約も終了することになっていました。
 借家人は、退社により転貸借契約が終了したにもかかわらず、家賃も支払わず居座っていましたので、法的な手続きを経て明渡しを実現した例です。 

賃貸借契約

地域静岡県三島市
家賃62,000円/月
状況約50万円滞納(約8ヶ月分)
従業員でなくなった場合は終了する賃貸借契約
備考連帯保証人なし

経緯

2016年04月15日賃貸借契約開始(家主から会社が賃借し、従業員に転貸)
2019年03月20日借家人が依頼人(会社)を退職
借家人から退職後の継続居住を要望する旨の連絡
依頼人会社が審査中に連絡が途絶える(利用は継続している様子)
2019年12月03日ご相談・明渡しについてご契約
提訴準備(印紙発注・切手準備・訴状等作成・証拠書類等準備・住民票等確認)
2019年12月09日東京地裁に提訴
→訴状不送達
2020年01月22日現地調査
公示送達申立て
2020年02月14日第一回口頭弁論期日(不出頭)
結審
2020年02月21日判決言渡し
2020年03月03日静岡地裁沼津支部執行官室に明渡しの強制執行申立て
2020年03月13日強制執行期日(催告)
借家人不在
室内の状況から利用していることを確認
2020年03月30日強制執行期日(断行)
室内で借家人を発見。そのまま退去立会。合鍵の回収・所有権放棄書の受領
建物明渡し完了

経過

 借家人は従業員であった30代男性で、3月に自己都合で退職した後は、契約によれば明渡しが必要でした。しかし、従業員としてではなく一般の借家人としての再契約の申出がありました。
 社内での検討の結果、継続を認める方向でしたが、突如として連絡がつかなくなり、訪問しても緊急連絡先に連絡しても所在が判明しませんでした。

 1ヶ月後に連絡が入りましたが、必要な書類は提出されずがいつまでも提出されずにおり、またも連絡がとれなくなりました。
 結局、継続居住の話はなくなり、退去通知をしましたが、やはり応答がありませんでした。

 そこで、当事務所にご相談がありました。借家人の退社から8ヶ月後のことでした。

当事務所の対応

 既に何度も連絡を試み、退去を要請していたことや、先方が音信不通であることから、あらためての通知は行わずに速やかに裁判所に訴訟を提起しました。

 予想していた通り、訴状を借家人が受け取らなかったため、現地支店の依頼人担当者に現地調査をしてもらいました。
 応答はなく不在の様子で、電話にも対応がなかったため、裁判所にはその旨報告し、公示送達(相手が所在不明等の場合に裁判所に掲示することで送達とする手続)で訴状を送達しました。
 年をまたいだものの、2ヶ月余りで退去を命ずる判決が言い渡され、強制執行を申立てました。
 強制執行において、合鍵で中に入ったところ、借家人本人が部屋の隅に隠れていました。
 もっとも、すでに観念していたのか、特に抵抗せず、同行した支店担当者に合鍵を渡し、事後処理のための連絡先などを述べて素直に退去しました。
 

ポイント

 昨今は、専用の社宅を有する会社も減り、民間の賃貸住宅を利用した借上社宅が多いです。
 借り上げ社宅の特徴は大きく2つあります。まず1点目は、理論上転貸借となり2つの賃貸借契約があること、2点目は、身分関係(従業員であること)が契約条件となることです。
 いずれも、通常の賃貸借契約と比べて対応方法が大きく変わるということはありませんので、適切に事実関係を整理して主張することで、速やかに明渡の判決を得ることができます。
 特に社宅において従業員の地位を喪失した場合、明渡義務は比較的認められやすい傾向にあります。
 つまり、適切に法的措置を講ずれば、早期かつ着実に解決が可能です。
 会社にとって、従業員との関係を良好に保つことは重要ですが、退職した従業員とのやりとりに時間や労力をかけることは効率性や生産性の観点から望ましくありません。
 速やかに法的措置により解決を図ることが望ましいといえます。
 

弁護士の活動・費用

解決までの期間明渡しまで相談から3ヶ月
弁護士費用462,000円
(訴訟着手11万円、明渡着手11万円、明渡報酬22万円、日当2.2万円)
実費454,662円
(実費56,688円、強制執行費用41,904円、撤去・処分費用356,070円※)
※解錠技術者費用4.4万円、交通費26,700円含む。

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