建物明渡請求の裁判を自分で行うことについて(本人訴訟)

裁判手続の流れと本人訴訟

建物明渡を実現する際、相手に対する通知書の送付から始まり、退去を強制するに至るまで、複数種類の手続を取る必要があります。

順番に、内容証明郵便、民事保全、民事訴訟、民事執行です。

いずれも家主本人が自分で行うこともできますが、後述の通り、それぞれ非常に専門的であり、何度も裁判所に書類を提出したり、現地に行ったりしなければなりません。本人で全て行おうとすると、日程調整や不備によるやり直しなどで、建物明渡がその分遅れてしまいます。

弁護士にご依頼いただければ、一連の手続きを代理でき、可能な限り短い期間で明渡をさせることができます。

弁護士以外の業者(不動産業者等)が建物明渡に関し裁判関連の手続を有償で請け負うことは、原則として違法です。この場合は家主も責任を問われかねませんし、権利実現は大幅に遅延しますのでご注意下さい。

内容証明郵便

建物明渡を求めるには、相手に対して滞納その他の契約違反を通知し(催告)、是正がなければ契約を解除して終了する、という意思表示が必要です。

この意思表示は必ずしも内容証明郵便で行う必要はないのですが、裁判で立証するには内容証明郵便によることが最も有効です。

自ら行う場合は、催告書や解除通知書を、所定の書式を守って複数作成し、これを郵便局に持参して発送する必要があります。

文面は、締結している賃貸借契約や、民法に則った内容である必要があります。また、催告と解除通知の双方を行う場合は、相当期間を空けて、催告に従わない場合は解除となる旨を明確に記載しなければなりません。

通知が不完全な場合は、後に裁判等で解除が認められず、数ヶ月分のタイムロスが生じかねませんので、注意が必要です。

民事保全

民事保全手続とは、訴訟などで権利を実現する際、手続中に生じた事情で権利の実現が困難になることがないように予め防ぐ目的で仮に相手の財産や権利に制限を掛けておく手続です。

建物明渡請求において、利用することの多い民事保全手続は、仮差押えと、占有移転禁止の仮処分です。

仮差押は、金銭請求のための保全手続です。つまり、相手から支払を受ける権利を保全するために、相手の財産を処分できなくする(凍結する)手続です。仮差押命令が発令されると、相手の所有する不動産について売却や担保権設定が制限されたり、預金が引き出せなくなったりします。

占有移転禁止の仮処分は、物件の明渡を受ける権利を保全するために、不動産の占有者について、第三者に移転することを禁ずる処分です。

占有移転禁止の仮処分命令が発令されると、その後、占有者は他に占有を移転することができなくなり、裁判を行っている間に占有者が交代したり増えたりした場合にも余分な手続をしなくてよくなります。

民事保全手続を代理で行えるのは弁護士のみです。

民事訴訟

相手の意思にかかわらずに退去を求める場合、必要になるのが裁判手続です。

通常は、物件所在地(入居者の住所地)の地方裁判所に訴状を提出して行います。なお、相続や離婚の場合の家庭裁判所とは、裁判所の種類が異なります。

裁判では、当事者が行うのは主張と立証であり、それぞれ書類を提出して行います。したがって、建物明渡を求める主張として、家賃滞納(債務不履行)の事実や、解除の事実を主張し、これらを書類等で証明します。

金銭請求を主張する場合は、滞納額や遅延損害金等を正確に計算し、裁判所が判決として出す場合にどのようなものになるかを、訴状に記載する必要があります。

主張を裏付ける立証が認められれば、裁判所から原告の主張を認める判決が言い渡されます。

したがって、訴訟の主たる手続は主張と立証ということになります。相手からの反論(支払った、猶予された、修繕費と相殺した、など)があれば、これに対して認否、反論、立証をする必要があります。

手続はそれ以外にも、相手に書類が届かない場合の送達手続や、一部弁済等が合った場合の訴えの変更手続もあります。また、事実関係に争いがある場合には、立証として、文書送付嘱託、文書提出命令、証言を求める人証申請などもあります。

民事訴訟は、通常は地方裁判所に訴えを提起することから始まり、判決に対して不服がある場合は高等裁判所の控訴審、最高裁判所の上告審まで、3回の裁判を要する場合があります。いずれも、弁護士のみが代理人となることが可能です。

民事執行

民事訴訟を経て判決を得たり、その他の裁判所の手続(和解・調停等)で明渡義務が記載されたりした場合、相手の意思にかかわらず、権利を実現することができます。

これを民事執行、強制執行と呼びます。

建物明渡の強制執行は、地方裁判所に所属する執行官により占有を取り除く(内部の物品を撤去し、相手がいる場合は連れ出す)ことになります。

まず、判決などに適切な執行文の付与を受け、書類を添付して強制執行の申立書を裁判所の執行官室に提出します。事前に撤去業者や解錠技術者の見当を付けておくこともあります。

その後、執行官や立会人との打合せ、撤去業者・解錠技術者との打合せを行い、実際に現地に行くことが2回ほどあります。いずれも通常は平日の日中です。

本人で行う場合は、これらを全て自身で行わなければなりません。不備があって執行が遅れれば当然、権利の実現(明渡)も遅れてしまいます。また執行の際に入居者のが、専門的な書類が多くありますので、自身で不備なく進めることは難しいです。

この手続は弁護士であれば、もちろん全て代理できます。

本人で行うことの困難性

結局、弁護士にご依頼いただくことが、建物明渡を最短で実現する方法です。

保全、訴訟、執行など、手続は複雑で多数ありますので、本人で行うことは難しいです。

弁護士を雇えば、その分報酬等の支払は必要ですが、本人で対応しようとして時間がかかれば、その分損害が拡大し、結果的にも不利となります。まずはご相談いただき、弁護士による代理について、ご検討いただくことをおすすめします。

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