滞納者が判決に従わず退去しない場合

判決の効力

裁判所に訴訟を提起して、審理の末、判決を得る最も重要な目的は、強制的に権利を実現することです。

すなわち、裁判所が相手(被告)に対して明渡や支払を命ずる判決を出した場合、相手の意思にかかわらず、その権利(明渡や支払)を実現することができます。

この、相手の意思にかかわらずに権利を実現する手続きを強制執行といいます。

判決が確定すると(あるいは確定しなくても執行可能なものであると)、その判決は執行力と呼ばれる効果を持ち、これを再び執行担当の裁判所に提出することで、執行ができるのです。

家賃滞納者が明渡判決に従わない場合

家賃滞納やその他の契約違反をした入居者に対し、賃貸人が契約解除の意思表示を行い、続く訴訟で明渡を命ずる判決が出た場合、上記の通り、入居者には明渡を強制することができます。

判決は相手にも送達されますので、相手も明渡の義務があることは判っているはずですし、実際に判決に従って自ら退去する方も少なくないですが、中には退去しない方もいます。この場合は、明渡の強制執行を行うことになります。

具体的には、物件の所在する地域の地方裁判所に対し、強制執行を申立て、裁判所に所属する執行官による、強制退去を行うことになります。

明渡の強制執行の流れ

明渡を命ずる判決に基づき、強制執行する流れは次の通りです。

  1. 執行文の付与・送達証明書の取得
  2. 裁判所への申立書及び添付書類の提出
  3. 執行官・執行補助者との打ち合わせ
  4. 第一回訪問(催告期日)
  5. 第二回訪問(断行期日)

強制執行の準備及び申立書の提出

強制執行は判決に基づいて行います。

まず、提出書類の準備をします。判決を出した裁判所に対して、執行に必要な執行文を付与してもらうと共に、その判決書が相手(債務者)にも送達されていることを証明してもらいます。

そして、強制執行の申立書に、判決書や送達証明書その他の必要書類を添付して裁判所に提出します。提出先は、明渡の対象物件の所在地を管轄する地方裁判所ですので、当初の裁判を行った裁判所とは異なる場合もあります。

執行官及び執行補助者との打ち合わせ

申立書が受理され、特に問題がなければ、執行官が決まります。その後、一定の予納金等を予納すると、訪問に備え、打ち合わせを行います。

相手や物件の状況を説明し、注意事項などを共有します。

裁判所による明渡の執行ではありますが、実際に撤去作業等を行うのは専門の業者であることが多いです。こうした業者を執行補助者と呼びます。

執行官及び執行補助者と1回目の訪問(催告期日)の日時を決めます。

催告に際して注意事項、懸念事項がある場合などは、執行官に伝え、認識を共有しておきます。

催告期日及び断行期日

訪問は通常2回行われ、催促する趣旨で訪問する1回目を催告期日と呼び、実際に撤去・明渡を実施する2回目を断行期日と呼びます。

1回目の催告期日では、室内の判るところに公示書を貼り、入居者には断行期日を告げて、その日までの任意退去を促します。たとえ不在でも合鍵や解錠技術者による解錠で、中に入って手続きを行います。

2回目の断行期日では、執行補助者はトラックや複数の作業員を連れて臨場します。入居者が未だ退去せずに占有している場合は、強制的に退去させることになります。

執行官は相手が多少抵抗していても、退去させます。場合によっては警察の応援も呼び、明渡を実施します。

荷物についても、多人数の作業員が効率よく梱包、撤去します。ワンルームであれば1時間程度、一戸建てであっても2,3時間で作業が完了することが多いです。

このように相手が仮に判決に従わなかったとしても、確実に明渡を実現することができます。

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