建物明渡請求を依頼する場合の弁護士と司法書士の違い

建物明渡請求の特殊性

建物明渡請求の特徴としては、段階に応じて様々な裁判手続がある点、対象が不動産であり、家主にとって財産的価値が高い点、入居者にとっても生活や営業の拠点として重要性が大きい点、などがあります。

これらの特殊性から、建物明渡請求を進めるに当たっては、より正確かつ適切な対処が求められます。

弁護士と司法書士の違い

弁護士は、法律及び裁判の専門家であり、裁判官や検察官と同様に司法試験の合格者にその資格があります。

司法書士は、原則として登記の専門家であり、不動産登記の申請や手続に精通しています。司法書士試験の合格者が資格を有します。

通常、司法書士は裁判所に関する業務に就くことはありません。もっとも、一定の研修等を受け、認定されることで、訴額140万円以下の事案に限り、かつ簡易裁判所に限って、訴訟の代理人となることができます。

弁護士は、通常、建物明渡に限らず、金銭問題、交通事故、労務事件、家事事件、行政事件など、日常的に訴訟活動を行い、地方裁判所をはじめ、高等裁判所や最高裁判所の裁判も行う他、仮処分などの保全事件や強制執行事件も多く取り扱います。当然、全ての手続きにおいて代理人として活動が可能です。

これに対して、司法書士は業務の大半は登記申請であり、訴訟の占める割合は、たとえ認定により可能であっても小さいです。したがって、弁護士と比較すると、法律や裁判の知識や経験が少なく、形式的にも、地裁・高裁・最高裁などの裁判所での審理や、保全や執行事件においては、一切、代理人となることができません。

建物明渡及び立退き請求を司法書士に依頼する場合の注意点

上記の通り、司法書士が代理人として活動できる範囲は訴額140万円以下で、かつ裁判手続としては簡易裁判所の通常訴訟に限られます。

建物明渡請求では、交渉や訴訟の前に占有移転禁止の仮処分等の保全手続を要する場合がありますが、司法書士は代理ができず、必要に応じてご依頼者の方が直接裁判所に行って、仮処分や仮差押などの保全手続を行う必要があります。

そして、通常訴訟においても、簡易裁判所から地方裁判所に事件が移送されたり、相手が控訴して地裁や高裁で審理がされるとなった場合、司法書士には代理ができませんので、突如、自ら裁判を行うか、新たに弁護士を雇うかを迫られることになります。

無事、判決を得ても、強制執行手続については司法書士には代理権はありませんので、明渡の強制執行で執行官や撤去業者、解錠技術者と打ち合わせをし、現地で催告・断行の手続きを行うのも、全て家主が自身で対応しなければなりません。

家賃や原状回復費用の請求についても、140万円以上であった場合は司法書士は一切対応できません。結局、自ら交渉・裁判を行うことになります。

金銭支払についての判決が出ても、裁判所に対する差押え命令の申立や、その他の財産開示、銀行や法務局からの情報取得手続きなども、弁護士のみ代理可能です。

費用について

弁護士は司法書士と比べて費用が高いとお考えの家主の方もいらっしゃるかもしれません。実際に、金額的には司法書士に比べて弁護士の方が費用が高いことが多いです。

しかし、弁護士であれば、相手への請求金額に上限はありません。代理可能な手続も、保全、訴訟、執行、財産開示、情報取得等、制限がありません。

裁判所も簡裁から最高裁まで、全て対応できます。何より、法律・裁判についての知識・経験が司法書士に比べて圧倒的に豊富です。

司法書士は140万円以下で、かつ代理可能なのは簡裁の訴訟のみです。

そうすると保全や執行が多く必要な手続きを全て自分で行うことになります。要する期間も、全てを弁護士が代理する場合に比べ、数ヶ月多くなることも多いです。

そうすると、結果的に数ヶ月分の家賃に相当する損害となる場合がありますので、必ずしも金銭的にも司法書士が有利とはいえません。

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