建物明渡請求を弁護士に依頼するメリット

建物明渡請求の手続

建物明渡請求の手続

家賃滞納などの契約違反があり、借家人側に問題がある場合、建物を明渡してもらうのは当然で、わざわざ裁判などをする必要はない、と考える方もいるかもしれません。

しかし、ことはそう簡単ではありません。日本は法治国家ですので、相手の意思に反して退去を求める場合には、必ず法律の手続に従う必要があります。

法律の手続とは、この場合は、きちんと裁判を行って明渡しを命ずる判決を取得し、その判決をもとに強制執行を行うことです。

こうした手続を無視して退去を実力行使により強制したり、脅したり嫌がらせすると、違法な行為となります。相手(借家人)から数十万円以上の慰謝料を請求されたり、強要罪や住居侵入罪などの刑事責任を問われ、逮捕されたり、懲役刑を受けたりするかもしれません。

相手が悪いのだから、と安易に考えることなく、必ず正式な建物明渡請求の手続を踏む必要があります。

建物明渡請求の選択肢

家賃滞納などで家主が建物明渡を検討する場合、次の選択肢があります。

  1. 自分で全ての手続を行う。
  2. 不動産業者に相談する。
  3. 司法書士に相談する。
  4. 弁護士に相談する。

それぞれメリット・デメリットはありますが、結局は弁護士にご相談いただくのが最も確実で迅速な解決につながります。以下にそれぞれの場合について説明します。

自分で全ての手続を行う

昨今はインターネット等に様々な情報があり、なんとか自分で全て解決しようとすることもあるかもしれません。裁判も、こうした情報や書籍を参考にして自身で行うことも考えられます。もちろん、専門家への報酬は不要です。

しかし、専門外の方が裁判(本人訴訟といいます。)を行うことは、相当の労力と手間を要する上に、時間がかかることで、結局は損害の拡大につながることも多いです。

第一に、既に述べたように、正式な手続を経ずに相手の権利を侵害すれば(自力救済)、慰謝料などの民事責任や、刑事責任(罰金等)などを問われることがあります。それ自体も金銭負担ですが、こうした場合は解除手続自体がやり直しとなり、明渡までに長期を要することもあります。

第二に、裁判手続の進行には、民法や民事訴訟法、借地借家法などの各種法令を理解している必要があります。訴状や準備書面といった裁判書類も正しく作成・提出できなければ、裁判(通常1ヶ月ごとに開かれます)が数回多くかかり、弁護士が行う場合に比べて数ヶ月余分に裁判の日数がかかることも多いです。

法廷で行われる手続で、裁判長や相手(借家人)に適切に即時に対応することは困難ですし、そもそも平日に裁判所に出向かなければなりません。

相手が所在不明であれば、住民票や戸籍の附票を取得したり、所在調査をしますが、こうした手続一つとっても、慣れていないと何日もかかります。

不動産業者に相談する

賃貸管理に不動産業者を利用している家主も多いと思います。不動産業者は滞納に関する経験も豊富ですので、方針の相談することはよいですし、家賃回収を委託していれば督促程度の対応は、してもらえます。

しかし、不動産業者は、建物明渡に向けた法律的な行為を、家主の代わりに行うことはできません(弁護士法違反)。そもそも契約解除のための通知を不動産業者が作成すると、法令の要求する記載要件を満たしておらず、無効となってしまう場合もあります。

したがって、通常は、不動産業者も、弁護士等の専門家を紹介することになります。

問題のある不動産業者

世間には問題のある不動産業者も多いので注意が必要です。

ほとんどの不動産業者は良心的で、法令にも十分通じており、適法に業務を行っています。法律行為に関しては対応できないとして、適切なタイミングで弁護士などを紹介して引き継いでくれます。

しかし、一部の不動産業者は、違法な退去の強要、例えば非常識な時間帯の執拗な連絡や訪問、名誉を毀損する貼り紙、承諾のない鍵の交換や相手の所有物の撤去、などを行う場合があります。

違法性を認識している場合もそうですが、知識が不十分で違法性を認識しない場合でも問題です。家主が巻き込まれて、違法行為に加担したり、違法行為を依頼したとして、責任を問われる場合もあります。

不動産業者に相談しつつも、平行して弁護士に相談するのがよいでしょう。

司法書士への相談

弁護士に近い職業として、司法書士があります。

司法書士は原則として登記の専門家ですが、一部の司法書士は簡易裁判所(訴額が140万円以下)の訴訟手続に限って、代理人となることを認められています。

建物明渡請求についても、訴額等によっては、こうした簡易裁判所の代理人として司法書士を依頼することも可能な場合があります。

もっとも、簡易裁判所で代理ができるといっても、本来的に登記の専門家である司法書士は、訴訟手続について必ずしも十分な知識や経験があるとはいえませんので、少し相手が反論するなどして、事案が複雑になったり、反訴や訴訟参加など特殊な手続になる場合は、司法書士の手に余るといわざるを得ません。

簡易裁判所から地方裁判所に移送されたり、判決が出ても相手が控訴して地方裁判所に進んだ場合は、制度的に司法書士は手続ができません。そこから先は自分で進めるか、新たに弁護士に依頼しなくてはなりません。

また、訴訟以外の保全・執行手続についても、司法書士には一切代理が認められません。裁判の前に占有移転禁止の仮処分の申立をしたり、判決を元に強制執行により明渡を実現したり、相手の預金や不動産、給料などを差し押さえて滞納家賃を回収しようとしても、全て自分でやるか弁護士を頼むことになります。

建物の明渡の実現には強制執行が必要な場合が多いですが、家主は自分が手続をしなければなりません。これではせっかく専門家に依頼した意味がありません。

弁護士に依頼するメリット

弁護士は法律及び裁判の専門家です。交渉、保全、訴訟、執行、すなわち全ての裁判や法律関係の手続がその職務範囲です。

したがって、滞納直後の督促や解除通知の書類作成や、裁判の遂行において、迅速に、必要にして十分な対応が可能です。

裁判前の保全手続、裁判上の特殊な手続、その後の強制執行手続など、全部を包括的に代理するため、家主の方は原則として、何もしなくてもよいです。

当事務所の弁護士は、賃貸物件に関する相談を多く受けており、最短での判決取得、事案の解決を目指します。

自身で訴訟手続を行う場合とは異なり、弁護士報酬の支払の必要がありますが、諸手続に迅速に対応することで退去の時期が早まれば、その分、新たな入居者から家賃が入り、損害拡大を防ぐことができます。

また家主の方が貴重な時間や労力を費やすことなく、本業に集中できますので、弁護士報酬を支払ってもなお、金銭面でもプラスになることが多いです。

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