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事業者の賃料滞納
事業者の賃料滞納については、損害の拡大ペースが速いことから、すぐに対処が必要です。
そして、家主としては損害を最小化したい余りに、自身でなんとか解決を図ろうとしてしまう場合があります。
しかしながら、滞納による契約の終了と、その後の明渡については、相手の同意が得られない限りは裁判所による明渡判決が唯一の方法です。
正式な手続きによらずに、相手の意思に反して権利を実現することを自力救済といいますが、自力救済は法律上認められていません。
したがって、自力救済行為は違法行為として、民事・刑事の責任を負うことになりますので、行うことはできません。
自力救済として問題となる行為
次のような行為は全て違法となります。
- 相手の不在時に、承諾なく物件内に立ち入ること
- 相手の不在時に、入り口のカギを交換したり、別のカギをつけるなどして、相手が物件を利用できなくすること
- 交渉の限度を超えて、相手に家賃支払いや物件の明渡を催促したりすること(例えば、大声や怒鳴り声を出したり、ドアをたたいたり蹴ったりする)。
- 第三者が見える位置に張り紙などをして、家賃滞納の事実を掲示したり、退去を求めたりすること
- 相手に有形力を行使して(引っ張る、押す、持ち上げるなど)退去させること
- 生活に必須の設備を停止すること
事業者の場合の注意点
相手が事業者の場合、自力救済行為が、営業妨害となる場合があります。
刑事責任(業務妨害罪、信用棄損罪)を問われたり、また営業上の損害を請求されたりする場合があり、一般的な住居の場合に比べて、想定外の責任を負担する可能性が高まります。
近時はインターネットやSNSの発達により、特に店舗や事業者による情報発信が拡散する範囲も広くなっています。家主の行為が違法性を有している場合、思った以上に多くの対象者に当該行為の問題を追及される場合もあります。
相手の家賃滞納が発端とはいえ、家主自身が非難、攻撃されるおそれもありますので、くれぐれも自力救済行為には及ばないよう、注意しなければなりません。