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事業用物件の原状回復
事業用物件は、立地がよい分家賃が高く、滞納による損害が拡大しやすいという特徴があります。
そして、原状回復の観点からは、その費用が住居とは比較にならないほど、高いことが多いという特徴もあります。
飲食店をはじめ、いわゆるスケルトン渡しであれば、原状回復はスケルトンに戻すことを意味します。
厨房設備を擁するような飲食店、多数の陳列棚を配置した小売店、特殊な設備を必要とする美容院や医療機関などの場合はもちろん、一般的な事務所であっても、電話や通信機器、空調などの配線・配管を増設することも多く、間仕切り用に造作壁やパーティションを設置したり、大型の事務機器を入れることもあります。
そうすると、原状回復費用は数十万円、数百万円となることも珍しくありません。
保証金があるとしても、滞納家賃と原状回復費用を全てまかなえるとは限りませんので、注意が必要です。
明渡請求と原状回復請求
原状回復費用は、相手が退去した後でなければ、正確にはわかりません。
したがって、相手が任意に明け渡さない場合は、まずは明渡請求と家賃請求の訴訟を行い、その後、原状回復費用請求を行う必要があります。
連帯保証人への請求
賃貸借契約における連帯保証人は、通常、賃借人すなわち入居者が契約上負う義務について、全て保証します。
したがって、家賃支払義務はもちろん、原状回復費用についても、連帯保証人にはその全額を支払う義務があります。
連帯保証人は、自らが何か利益を得たわけでも、何か契約違反をしたわけでもないのに、多額の支払義務を負うことになりますので、非常に不本意に感じる方も多いようですが、金銭債務については、連帯保証人も「連帯して支払え」と認められることが通常です。
連帯保証人の資力
連帯保証人が賃借人と同じだけ金銭債務を負うとしても、その連帯保証人に財産がなければ、家主としては、金銭的な満足を得ることは難しいです。
事業用物件においては、入居者が会社などの法人であり、連帯保証人が当該法人の代表者(代表取締役)などの場合もよくあります。
しかし、入居者の法人の財務状況が悪化し、家賃支払すら十分でない場合は、法人のみならず、代表者個人も資金繰りが悪化し、資力がない場合が多いです。
破産する場合も、法人と代表者個人が同時に破産することが通常ですので、代表者の連帯保証は余り安心できません。
事業用物件で、保証人の資力が当てにならないと考えられる場合は、とにかく退去を優先させて損害の拡大を防ぐことが重要になります。