明渡の断行の仮処分

仮処分とは

仮処分とは、訴訟をしていては時間がかかりすぎる場合に、より簡易な手続きで処分を行うものです。

通常の判決に相当するのが仮処分命令であり、権利関係の有無を裁判所が判断します。

もっとも、本来は正式な裁判をすべきところを急ぐという理由で審理を簡略化するので、事後的に正式裁判により裁判所の判断を仰ぐことが前提となっています。

断行の仮処分とは

通常の仮処分は、その性質上、一定の期間を確保できればよく、権利の実現までは達成されないことが多いです。

例えば、財産を給付してもらう権利を実現するために財産を売却できないようにする処分禁止の仮処分であるとか、相手を退去させるために、相手が別の占有者と交代することを禁止する占有移転禁止の仮処分とかです。

これらの仮処分は、権利(給付や退去)を実現するまでには至りません。

しかし、中には権利の保全をする方法が、権利の実現しかないケースがあり、これを「断行の仮処分」といいます。

本来は正式な裁判を経て実現すべき権利を、(時間的な余裕がないためとはいえ)仮処分の形で実現するため、他の仮処分に比べれば、慎重に判断がなされます。つまり、求められる証拠や必要性のハードルが高いということです。

明渡の断行の仮処分

明渡の断行の仮処分というのは、断行の仮処分の中で、その内容が明渡である場合をいいます。

断行の仮処分は、もともと通常の仮処分より慎重に判断される上、明渡という点でも、占有者に与える影響が不可逆的で影響が大きいことから、建物明渡の断行の仮処分の実例は多くありません。

建物の状況が極めて危険な場合や、家主の負う損害が極めて大きいと思われる場合など、すぐに退去しないと致命的になる場合には、検討の余地があります。

また、建物ではなく、駐車場や資材置き場など、制限される利益がそこまで重要ではない場合は、土地明渡の断行の仮処分も検討すべきケースがあります。

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