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建物明渡請求の流れ1(滞納発生から内容証明による通知)
①滞納の発生・催促
賃貸借契約において、家主の義務は賃貸物件の提供ですが、借家人の義務は家賃支払いです。家主は常に、借家人からの家賃支払いに注意を払う必要があります。
毎月の期限には必ず家賃の入金を確認し、延滞が生じた場合は速やかに電話や手紙で確認、催促をすることで、家賃滞納を早期に確認すると同時に、入居者の意識を高め、滞納を減らすこともできます。
現地に赴いて賃貸物件を直接確認したり、連帯保証人にも郵便を送って到達状況をみるなど、催促すると同時に、借家人や保証人の所在や状況を確認することも重要です。
②内容証明郵便(支払催告・解除通知)
滞納が2ヶ月に達した場合は、解除を検討します。
内容証明郵便により支払催告を行い、同時に支払がない場合には解除をする旨、通知します。通常は、借家人と連帯保証人の双方に、同時に内容証明郵便による文書を送ります。
文書には、延滞している家賃の総額の他に、支払期限を記載します。当事務所では到着日から5日後とすることが多いです。
建物明渡請求の流れ2(民事訴訟)
③訴訟提起(裁判)
支払期限を経過しても支払がない場合、速やかに訴訟(裁判)を起こします。なお、場合によっては仮処分の手続を訴訟前に行うこともあります。
裁判は早くても結果が出るまでに1、2ヶ月を要しますし、様々な事情で数ヶ月かかることもありますので、短縮できる部分は1日でも早く進めることが望ましいです。
当事務所では、提訴準備はご相談の段階から進めており、支払期限の翌日には提訴、すなわち、裁判所宛に訴状を提出する場合が多いです。
裁判では、賃貸物件の明渡を求めるほか、賃借人と保証人に対して滞納家賃及び遅延損害金の支払を求めます。
④受理及び送達
訴状が裁判所に受理され、訴訟費用の納付等が済むと、裁判所と原告側代理人(当事務所)との間で初回の裁判の日(期日)の調整があります。
初回期日は、概ね提訴から1ヶ月程度後の日になることが多いです。初回期日が決まると、相手(賃借人と保証人)に請求内容(明渡と支払)が記載された訴状副本と、初回期日が記載された呼出状が送られます。
裁判所からの書類は、特別送達、すなわち書留郵便のように郵便局員が直接交付するかたちで送られます。
相手への書類送達ができない場合は、所在地の現地確認・調査などが必要な場合があります。
⑤裁判(審理)
相手に書類が届き、初回裁判の日になると、法廷で審理が行われます。
家主側(原告)は、当事務所の弁護士が出席しますので、家主ご本人はお越しいただく必要はありません。
相手(賃借人・連帯保証人)が出頭しない場合や、出頭しても特に滞納の事実に争いがない場合は、初回のみで審理を終えます。
相手が支払額について争う場合や、家主に対する請求との相殺を主張する場合などは、複数回の裁判期日が開かれる場合もあります。
⑥判決
審理終結後、次の裁判の日に判決言い渡しがなされます。
家賃滞納の事実に争いがない場合は、初回期日の翌週に言い渡される場合が多いです。
内容も、家賃を支払わなかった以上当然ですが、原告(家主側)の請求通り、明渡と支払を相手に命ずるものとなります。
建物明渡請求の流れ3(強制執行)
⑦強制執行申立
判決が出ても相手が退去しない場合、強制執行手続に進みます。
手に入れた判決書を用いて、裁判所に強制執行を申立てします。申立先は、賃貸物件の所在地を管轄する地方裁判所です。判決を出した裁判所と同じ場合もあれば、違う場合もあります。
裁判所に所属する執行官が、強制執行を実際に実施します。
強制執行申立書に判決書正本や判決を相手に送達した証明書などの書類を添付して、裁判所の執行官室に提出します。
書類の確認が終わると、執行官と強制執行の日程を調整します。
強制執行では2回にわたり、訪問を行います。1回目を催告といい、2回目を断行といいます。申立後には、1回目の催告の日を決めます。この日は相手には通知されません。
⑧明渡催告(1回目の訪問)
執行官と調整した日に、賃貸物件の現地に行きます。
執行官と弁護士の他には、裁判所の立会人、撤去業者、解錠技術者などが同行します。
対象物件が不在で施錠されていても、家主の持っている合鍵を用いたり、解錠技術者により解錠したりして、中に入ります。
催告期日では、1ヶ月以内の断行日までに明け渡さないと強制的に撤去を実現する旨、相手に告知します。不在なら手紙を置きます。そして、室内の壁に「公示書」を掲示します。
⑨明渡実施
催告の際に、1ヶ月以内の期間で、断行日すなわち強制執行を実施する日を決め、相手にも通知しておきます。
その後、任意に退去する場合もあります。退去がなされない場合は、強制撤去となります。
通常トラックと、撤去業者の作業員が10人ほど臨場し、手際よく内部の物品を撤去します。
相手が在室している場合も、建物から退去してもらいます。執行官は相手の意思に反して実力行使をする権限があります。相手が抵抗する場合などは警察官の応援も得て退去を実現します。
断行日をもって賃貸物件は家主の占有管理に戻り、その日から鍵の交換や原状回復を行うことが可能です。
その後、物品は即処分する場合もありますが、必要に応じて保管のうえ引き取りを求めます。引き取りがない場合は廃棄処分します。