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1ヶ月は要注意、2ヶ月は要相談
家賃滞納が生じている場合に、弁護士に相談する時期はいつが望ましいか、という質問はよく受けます。
答えは、遅くとも2ヶ月に達した時点です。もちろん1ヶ月でご相談いただいてもよいですが、2ヶ月なら是非ご相談をおすすめします。
なぜ2ヶ月なのか
理由は2つあります。
一つには、滞納が常態化する可能性が高まることであり、もう一つは、法的措置を見据えて行動するタイミングとして2ヶ月目が最も望ましいことです。
滞納の常態化
家賃を1回支払い忘れることはよくあることです。持参や振込の場合、仕事の都合や体調などの理由も考えられます。銀行口座からの自動振替でも、うっかり残高不足ということはあります。しかし、滞納が2回目となると、話は全く違います。
支払能力があり、うっかり忘れた場合、ほぼ全ての人は2回目までに支払います。つまり滞納が2ヶ月分に到達する場合、支払能力に問題がある場合がほとんどです。
こうした方は、その後滞納が膨らんでいくことが多く、仮にいったんは支払があったとしても、再度遅れたり支払ったりを繰り返します。その結果、滞納が常態化していくことがほとんどです。
そこで、滞納2ヶ月目に到達した場合は、速やかにとりうる選択肢を検討し、実際に対応する必要があるのです。
裁判における判断
滞納者に対して法的措置をとり、強制退去等を行うには、裁判(民事訴訟)を起こすことが必要です(詳しくは流れをご参照ください)。
訴訟における判断では、契約を解除する要件の明確な基準はありませんが、通常は2,3ヶ月の滞納継続し、信頼関係が喪失したことが必要とされています。
相手に対する解除通知やその後の訴訟準備期間等も含めると、1ヶ月の滞納後にすぐに対処しても契約終了に十分な信頼関係の喪失とはいえない場合があります。
しかし、2ヶ月目に入った時点で相談いただき、その後、諸手続を進めれば、契約解除が通常は可能です。
遅れによる損失の拡大
相談者の中には、入居者による滞納が蓄積し、3ヶ月、4ヶ月、あるいは半年、1年、数年となってしまっている方も少なからずいらっしゃいますが、一日でも早く、ご相談いただければと思います。
例えば、貸金や損害賠償などの金銭請求や、離婚や遺産分割などの家事事件では、提訴や申立の時期の遅れがそのまま損害に直結するわけではありません。遅れても損害が急に拡大することはなく、むしろ法律上認められる遅延損害金(利息)が付加されます。時間をかけて検討、協議することで、よい解決策に至る場合もあります。
しかし、家賃滞納による建物明渡請求の場合、行動が遅れればその分、相手が居座る期間が続きます。その結果、新しく入居者から受け取れるべき家賃を逸失することになり、損失が拡大します。
理屈としては、その分、相手に対する家賃相当額の請求可能額が増えますが、滞納者には資力がない場合が多く、回収の見込みは薄いといわざるを得ず、損害が拡大します。
結果的に、一刻も早く退去させることが損害の拡大を防止する最善の手段となります。
そこで、法的に退去させることが可能になる2ヶ月目にすぐに行動を起こすことが、タイミングとしては最適なのです。