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立退きに必要な契約の終了
賃貸借契約は、家主が物件を提供し、借家人が賃料を支払う契約です。そして、通常は2年や3年など、契約期間が定められています。
契約がある以上は、家主には物件提供の義務がありますので、物件の立退きを求めるためには、順番としては賃貸借契約を終了させなければなりません。
契約終了理由には、合意解約、解約申入れによる終了、期間満了、そして解除があります。
合意解約や解約申入れによる終了
賃貸借契約は、家主と借家人が合意すれば、いつでも解約して終了することができます。契約期間の途中でも、契約上の制約があっても、当事者の合意があればいつでも解約可能です。
建物の老朽化などで、退去してもらいたい場合には、事情を説明して契約を合意解約し、終了することがあります。
また、賃貸借契約は借主からの解約申入れによる終了も比較的簡単にできるようになっています。契約上は1ヶ月前などの予告期間が定められている場合も多いですが、予告さえすれば、借主からの解約による終了は可能です。
反対に貸主からの契約期間中の解約申入れは、契約書に記載があってもそのまま有効とは限りません。
期間満了による終了と正当事由
賃貸借契約には期間が定められているため、家主は期間が満了するタイミングで契約終了とし、退去を求めること(更新拒絶)ができるように思われがちです。
しかしながら、普通賃貸借契約の場合、期間満了のときでも、借家人が同意しなければ、簡単には契約が終わりません(更新されて契約が継続します。)。
家主が更新をしないで退去させるには、法律上「正当事由」が必要とされています。この正当事由は、古くなったから、立て替えたいから、自分で使いたいから、という家主の事情があればよいというものではなく、物件を必要とする具体的事情が必要であり、かつ、通常は相当額の立退料の提供も併せて行うことを求められます。
家主が立退きを求める理由が、相手の契約違反等ではなく家主側の都合による場合は、正当事由を備えているかどうかをよく検討する必要があります。
契約違反による解除と信頼関係破壊
通常の契約では、契約中に解除理由が定められており、当該理由に該当する契約違反等があれば、契約を解除して終了することができます。
しかし、賃貸借契約において、契約違反等で契約を解除するためには、単なる解除理由の該当にとどまらず、それが双方の信頼関係を破壊する程度のものであることが必要です。
つまり、相手の契約違反が軽微なものにとどまる限り、解除して終了させる(立ち退かせる)ことはできない、ということです。これを信頼関係破壊の法理、などと呼びます。
例えば騒音などの迷惑行為や無断転貸などでも、その実質的な内容を考慮して、信頼関係を破壊するに至っていない場合は、解除できません。家賃滞納についても、3ヶ月程度の蓄積を要するという運用も、やはりこの信頼関係破壊の法理の現れといえます。