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家賃・賃料未払の方針
賃貸借契約において、家賃(賃料)滞納が生じた場合、方針は大きく2つあります。
すなわち、
- 契約を継続して利用してもらうか
- 契約を解除して退去させるか
です。
それぞれ、メリットとデメリットがあります。
契約を継続する場合
退去を求めず、契約を継続するメリットは「空室リスクを避ける」ということです。
物件によっては、空室になると次が決まらないものもあります。条件が悪かったり、同じ建物の他の部屋に既に空室がある場合などです。
そして、デメリットは、賃料不払の継続による損害です。待てば待つほど金額は増え、最後に破産などされた場合は、回収は事実上困難となります。
契約を解除する場合
退去させる場合のメリットは、賃料を払わない賃借人との関係を終了し、損害の拡大を止めることができることです。次の募集で優良な入居者が入ればよいわけです。
デメリットは、解除して退去させることに費用(裁判費用や執行費用、弁護士報酬)が必要となることです。
なお、解除して退去させるまでの期間、家賃が取れないと考える方もおりますが、誤解です。家賃相当額(契約によっては倍額なども)の請求権はありますので、解除したからといって、回収可能な金額が減るわけではありません。相手や連帯保証人に財産があれば、退去までの家賃相当額は確保可能です。
継続か解除か
結論から述べれば、物件の客付けが難しい場合を除き、滞納者は退去させて新たに優良な入居者を入れるほうがよいことが圧倒的に多いです。
滞納はほぼ例外なく常態化します。退去させる費用も滞納家賃額の増加に比べれば安いことも多く、また継続した結果、結局退去させる費用までかかれば、間違いなく早期退去が有利です。
解除には何ヶ月の滞納期間が必要か
よく受ける質問に、「解除するためには何ヶ月の滞納が必要か」というものがあります。まずはお手元の賃貸借契約書を確認してください。そこに、契約解除の理由として、「1回でも滞納した場合」や「滞納が2ヶ月分に達した場合」などとあります。
契約ですので、書いてある通りの期間で解除できると考える方も多いと思います。しかし、残念ながら契約書の記載通りには当然には解除できません。
もちろん、入居者が退去を承諾すればよいです(この場合はそもそも契約書に拘束されません)。しかし、入居者が退去しない場合に裁判で退去を求めると、裁判所は、たった1回の滞納で退去は厳しすぎる、として認めないことがあります。
結局、契約書の記載にかかわらず、滞納の累積額が3ヶ月程度は必要とする裁判所が多いです。ただし、これは明確に決まっているわけではなく、事案により変わります。
契約書に特に解除に必要な期間の記載がない場合でも、相手が契約違反をした場合の解除権は民法により決まっていますので、やはり3ヶ月程度の滞納があれば解除できることが通常です。