自力救済行為をしてしまった場合の損害賠償

自力救済と権利侵害(契約の終了の有無)

賃貸借契約が終了していない場合の居住妨害は、自力救済にすらあたらず、単なる権利侵害です。

すなわち、家賃滞納などがあっても、契約を解除して終了していない限り、建物の利用については入居者に正当な権利があります。その権利を妨げる行為は、自力救済にすら当たりません。不法行為、権利侵害です。

家主の権利行使(明渡しの実現)に先立ち、法律・契約に則って契約を終了させることは当然の前提ですし、契約終了後でも、適法な手続きによらずに、自らの判断・行為で入居者の利用を妨げると、自力救済行為として刑事・民事上の責任を問われるということです。

自力救済行為の種類

典型的な自力救済行為は大きく次の3つです。

第一に、無断立入、第二に無断撤去・処分、第三にカギの交換です。

そして、撤去・処分の際には立入りが前提となるなど、これらの行為が組み合わせて行われる場合もあります。

いずれも、裁判所により自力救済行為として違法性が認められ、慰謝料等も認められています。

自力救済行為や嫌がらせ行為が問題となった裁判例(慰謝料等)

1999年(平成11年)12月の札幌地裁の裁判例によれば、管理会社が居室内に立ち入り、ガス、水道の利用を止め、またカギを取り替えて閉め出した事例で、慰謝料10万円が認められています。

2009年(平成21年)5月の大阪簡裁の裁判例によれば、賃料滞納した借家人に対して、その催促の趣旨で留守中にカギ交換をして閉め出した事例で、慰謝料50万円が認められています。なお、この事例は解除がなされていない(自力救済にすら当たらない)例です。

2009年(平成21年)12月の姫路簡裁の裁判例によれば、貼り紙や大声による督促、ドアに鍵カバーを取り付ける方法での締め出しを行った事例で、36万5000円の慰謝料が認められています。

2010年(平成22年)10月の東京地裁の裁判例によれば、入居者の不在中に家財等を処分し、また鍵を付け替えた事案で、財産弁償40万円、精神的苦痛についての慰謝料60万円の合計100万円の損害賠償が命ぜられています。

2012年(平成24年)3月の東京地裁の裁判例によれば、家賃滞納に対して、怒鳴るなどの嫌がらせ行為を行い、着の身着のまま退去させ、家財等を廃棄処分した例で、財産被害について100万円、慰謝料について100万円の合計200万円の損害賠償が認められています。

2013年(平成25年)10月の大阪地裁の裁判例では、入居者に対し暴言に及び、鍵穴をロックする形で締め出しを行った事例で、慰謝料及び弁護士費用として88万円が認められています。

適法な手続きの重要性

上記の通り、自ら対応をしようとした結果、本来相手が悪いにもかかわらず、多額の慰謝料の支払を余儀なくされ、また刑事罰(罰金刑・懲役刑)を受けるおそれもある一方、明渡という本来の目的は達成できないこととなります。

そうすると、時間も大幅にかかり、結局は家主にとって不利益が大きくなります。早期に専門家に相談され、適法な手続きを執ることが、最小限の費用で速やかに退去させる方法です。

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