ゴミ屋敷の明渡と原状回復費用の回収を実現した例

概要

 本件は練馬区内のアパートの明渡し及び回収例です。
 入居者は1人暮らしの60代男性で、喫煙者でもありました。訴訟の間は連絡がつかず、部屋の状況は判りませんでしたが、強制執行の段階で立ち入ると、内部は雑多なゴミが堆積し、壁はいたるところまで煙草のヤニでかなり傷んでいました。
 訴訟及び強制執行により、退去を実現すると共に、財産関係や親族関係を徹底的に調査し、滞納家賃の他、執行費用や原状回復(リフォーム)費用も含め、全額の回収に成功しました。

賃貸借契約

地域東京都練馬区
家賃62,000円
状況約13ヶ月分(85万円)滞納。
滞納後は連絡がとれなくなった。
かなりのゴミ屋敷。備品の破損等多数(後に判明)。
備考連帯保証人あり(母。係争中に死亡)。
姉と借家人が相続人のところ、姉は相続放棄。
両親は離婚。
父は原状回復後に死亡確認。
父の相続財産を姉と借家人が相続。

経緯

1990年ころ賃貸借契約成立
2018年04月借家人が家賃を滞納しがちになる
2019年03月末滞納賃料が増え始める
2020年04月10日現地訪問・ご相談
明渡し・回収についてご依頼
2020年04月13日借家人・連帯保証人宛に内容証明郵便発送(催告及び解除通知)
提訴準備(印紙発注・切手準備・訴状等作成・証拠書類等準備)
2020年04月24日東京地裁に借家人・連帯保証人両名提訴
(借家人は訴状が送達できず。保証人状況調査開始)
2020年07月30日書留郵便に付する送達の上申
(7/29のほか、追加で8/6も現地調査)
保証人の死亡を確認
→保証人のみ訴え取下げ
(借家人の姉から相続放棄の連絡あり)
2020年08月26日第一回口頭弁論期日
借家人は出廷せず。訴訟は結審。
2020年09月09日判決言渡し(請求通りの完全勝訴)
2020年10月02日東京地裁執行官室に建物明渡強制執行の申立て
2020年10月23日催告期日(借家人在宅)
2020年11月19日断行期日(借家人在宅)
明渡し完了
2021年01月10日原状回復工事完了
方針検討・財産調査継続
2022年06月16日借家人の父の死亡を確認
相続財産を姉と借家人が相続することを確認
分割協議予定とのこと
並行して原状回復費用提訴・差押えの準備を開始
2022年07月04日東京地裁に借家人の原状回復費用について提訴
2022年08月10日第一回口頭弁論期日
結審・即日判決
2022年09月12日借家人の姉から分割協議終了の連絡あり
2022年09月22日借家人から請求額の確認の連絡あり
2022年09月26日借家人から請求額通りの入金を確認
原状回復費用を含めた全額の回収を完了

概要及び経過

 物件は練馬区内、環状8号線から少し住宅街に入ったところにある木造アパートです。
 滞納のある1階の部屋に入居していたのは、一人暮らしの60代男性です。
 30代の頃から、30年近く継続して居住しており、その間は滞納や迷惑行為などもなく、家主から見ればむしろ理想的な店子でした。
 借家人は日常的に仕事にも出て収入もあったようなので、滞納の理由は不明です。
 滞納後しばらくは、長年の関係からの遠慮もあり、家主や管理会社もそこまで強く催促はしませんでした。その結果、少しずつ蓄積した滞納額は1年分に膨らんでいました。

当事務所の対応

 基本的に、滞納案件はそれ以上の滞納額が増えないよう早期明渡を目指します。
 既に生じた滞納の回収は相手の資力次第の側面がありますが、退去を早期に実現することによる損害拡大の防止は、確実な効果が見込めるからです。
 ご依頼後、速やかに相手に催告・解除通知を送付し、訴えを提起し、裁判に欠席したため、すぐ明渡しを認める判決が出ました。
 判決に基づく強制執行の初回訪問において、初めて借家人と話をしましたが、やはり滞納分の支払は困難とのことで、強制執行を最後まで行うことになりました。
 強制執行で中に入ると、室内がゴミ屋敷のように物に溢れ、清掃不備などによる内装の著しい劣化状況も確認できました。 

原状回復前のバスルームの状況

 退去後、家主により原状回復工事が行われました。
 汚損が著しかったため、滞納分と合わせると家主側の出費はかなりの金額に及んでいました。
 その当時は借家人自身には見るべき財産はなく、勤務先も判然としませんでした。さらに、保証人として借家人の母親がいましたが、少し前に亡くなっており、他の相続人が相続放棄をしており、回収は困難と思われました。
 しかし、滞納額や原状回復費用が高額に及んだこともあり、徹底的に調査した結果、借家人に父方の相続財産があることがわかりました。
 そこで、当該相続財産の差押えを準備、通告しつつ交渉した結果、最終的には全額の回収となりました。

ポイント

 家賃滞納が発生する場合、基本的には資産や収入がないことが通常です。したがって、滞納額全額の回収が見込めません。
 そこで、保証人がいればその財産が当てになるのですが、賃貸借契約の期間が長期にわたる場合、保証人が死亡したり、保証人も高齢で無資力となってしまう場合があります。
 残念ながら回収困難なまま退去のみで終了するご依頼もありますが、可能な限り財産の調査を行うことで、本件のように満額の回収ができる場合もあります。弁護士には職務上認められた調査権限や、各種の差押、開示手続等の法的手続のノウハウがあります。
 ご依頼された家主様のご希望に添えるよう、最適な方法をご提案致しますので、まずは一度、当事務所にご相談下さい。

弁護士の活動・費用

解決までの期間明渡しまで相談から7ヶ月
全額回収まで相談から2年5ヶ月
(明渡しからは1年10ヶ月)
回収金額469万8000円(原状回復費用約159万円を含む全額)
弁護士費用148万4487円
(回収分の22%、明渡報酬22万円、訴訟着手11万円、内容証明手数料1.1万円)
実費95,094円(住民票・登記等調査、2回分の訴訟費用(印紙・郵送費など))
52,648円(明渡強制執行費用)
242,000円(執行業者費用。保管品処分費用含む)
159万8264円(原状回復費用)

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