契約者により駐車場に放置された車両を強制執行せずに撤去した例

概要

放置状況

 本件は小田原市内の住宅街にあるアパートの敷地内青空駐車場の事例です。
 賃貸人は、もともと賃借人アパートの一室を貸しており、その際に敷地内の駐車スペースも1台分貸していました。退去にあたり部屋の明渡は完了しましたが、車両だけ放置したままとなりました。
 こうした場合には、契約者との連絡状況、車両名義、車両の価値、駐車場の必要性などにより、とるべき手段が変わる場合があります。
 本件では、当事務所の調査により契約者と連絡が付いたため、処分についての同意を得て廃車回収業者を利用した撤去となりました。

賃貸借契約

地域神奈川県小田原市
駐車場代5,000円/月
状況20万円滞納(40ヶ月分)
連絡・応答なし
備考小型の15年落ち日本車
車検証・鍵なし
3年以上放置、自走可否不明

経緯

2016年10月末最後の入金
以後、支払いがないまま転居(駐車場の車両は放置)
2020年01月31日ご相談・ご契約
2020年02月10日賃借人に内容証明郵便を発送(催告・解除)
提訴準備(印紙発注・切手準備・訴状等作成・証拠書類等準備・住民票等確認)
2020年02月21日横浜地裁に提訴
※新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発出のため手続遅延
2020年07月07日第一回口頭弁論期日(不出頭)結審
2020年07月14日判決言渡し
2020年08月03日賃借人の転居先を訪問
不在。賃借人の元妻が対応するも、車両の鍵もなく対応困難
所在等調査
2020年08月13日新住所確認
滞納額請求書を新住所に発送
→反応・応答なし
2020年09月30日新住所訪問
不在。同居人が対応
2020年10月01日賃借人から連絡(協力姿勢を見せる)
必要書類等(陸運局提出用の委任状等)の要請
2020年11月13日ローン状況・財産等調査
→何度か賃借人に連絡も「準備中。待ってほしい」との回答
2021年06月03日賃借人に連絡、必要書類等を強く要請
2021年06月24日賃借人から必要書類等を受領
陸運局にて車両の登録事項を照会
2021年07月02日車両撤去業者手配・打合せ
2021年07月09日費用負担なく車両撤去完了

経過

 賃借人はアパート自体の家賃滞納はなく、駐車場代の滞納と、放置車両のみが残る状況でした。
 車両はナンバーもあり、外観上大きな不具合は見当たりませんでしたが、遠方に転居したことから放置が続いたようです。
  賃貸人からの連絡には応答せず、3年以上で滞納額が20万円まで膨らんでいたため、ご相談、ご依頼となりました。

当事務所の対応

 ご依頼後、内容証明を送り、催告及び契約解除の通知をしました。
 反応なく入金期限を経過したため、即提訴し、相手が初回裁判に欠席したため1週間後に判決が出されました。
 その後、駐車場に空きがあり、駐車場代も低廉な地域であって急ぐ理由がなかったこと、車両にローン等の残がなく所有権が契約者にあったこと、車両に価値がなく差押等の対象とならなかったこと、一応は契約者の所在と連絡先が判明したことなどから、交渉により処分の承諾を得て処分する方針をとりました。
 承諾のための書類の返送に時間を要したものの、書類の返送を受けてからは速やかに民間の車両処分業者を利用して撤去が完了しました。

ポイント

 放置車両についての相談も比較的多くうけることがあります。これが一般の道路等であれば、警察に相談し、レッカー等による撤去を進めることもあります。
 しかし、私有地である駐車場の場合、警察は対応しないため、家主が民事手続で撤去を行うことになります。このとき、法的手続きを経ずに勝手に撤去・処分をすると、原則として違法な対応となり、後日、所有者から責任追及を受ける恐れがあります。
 したがって、交渉して撤去や処分の承諾を求めるほか、訴訟や仮処分、執行手続等により撤去を進めることになります。
 前述の通り、どのような手続きをとるべきかは、諸条件により異なりますので、まずは弁護士にご相談いただければと思います。
 ご相談の際には、放置車両の写真は複数の方向から撮影し、ナンバーや敷地全体の写真もご準備ください。

弁護士の活動・費用

解決までの期間明渡しまで相談から17ヶ月
※途中コロナウイルスによる5ヶ月程度の手続遅延あり
弁護士費用170,500円
(内容証明5,500円、訴訟着手金5.5万円、明渡報酬11万円)
実費35,730円
※撤去・処分費用を含む

keyboard_arrow_up

0120940070 問い合わせバナー LINE相談予約