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東京地裁平成31年4月25日判決
本判決は、転貸は可能としながらも住居使用目的に限定していた賃貸借契約において、民泊営業は目的外使用であって信頼関係を破壊したとして、解除を認めた事例です。
契約内容
都内のアパートについて、2015年の賃貸借契約締結時には、「(借家人名)の住居として使用する」との約定及び「転貸することを承諾する」との特約がありました。
借主の住居として使用することと、転貸することはやや不整合ですが、標準的な書式に、転貸の承諾を特約とした盛り込んだ結果のようです。
民泊の実施
もともと、このアパートはやや管理状態が悪く、以前は空室が続くなどしていました。そこでオーナーは、試しに民泊を行いましたが、結局安定収入にならなかったので、民泊はやりたくないと考えていました。
しかし、問題となった賃借人は、オーナー自身は民泊をやりたくないとしても、自身か第三者において民泊を行おうと考え、借りるに至りました。
そして、上記の通り、転貸の承諾は得たものの、民泊の承諾はオーナーから得ないまま物件を借り、民泊を実施しました。
裁判所の判断
裁判所は、結論としては用法遵守違反による解除を認めました。
仮に転貸が承諾されていたとしても、特定の借主が長期間住居として利用する場合と、不特定多数者が利用する民泊とは使用態様に差異が生じる点や、実際に、民泊によるトラブル(誤って近隣の部屋に入ろうとする、大声を出す、ゴミ出しマナー違反など)が生じている点などを考慮しています。
また、民泊が発覚した後も一定期間、民泊営業を継続した点なども、信頼関係を破壊する理由として挙げています。
ポイント
民泊は、利用する側にとってはホテルや旅館とは異なる滞在もでき、また数百万戸と増え続ける空き家の有効利用としても注目されています。
しかし、物件オーナーやマンションの管理組合としては、民泊はトラブルが頻発するとして敬遠する方も多いです。
本判決は、契約時に説明がなく、また実際に民泊によってトラブルが生じているなどの事実を前提に、解除を認めた事例として参考になります。
物件を借りて民泊営業を行う場合は、民泊を承諾する旨を明確に文書化しておく必要があります。