家賃滞納解決の流れ ③民事訴訟

 滞納により賃貸借契約が解除となった場合、相手には法的にはその部屋を利用する権利がなくなります。解除通知を受けて、すんなりと自ら引っ越して出ていく相手であれば、それ以降の手続は不要ですので、残るのは金銭請求のみです。

 しかし、現実に解除通知を受け取ったからといって、すぐに出ていく人は多くありません。引越代がない、借りる場所がないなどと理由をつけて、ずるずると居座り続ける借家人も多いです。連絡もつかず、理由や予定も、いるのかいないのかも何も判らないまま、明渡しが進まないという場合もあります。

 こうした状況で、家主としては合鍵で中を確認し、場合によっては撤去をしたくなるかもしれません。しかし、日本では例え家賃滞納額が大きくても、勝手に部屋に入ったり、財産を処分したりできません。

 裁判所が判決で明渡しや支払いを命じ、それをさらに執行官が執行する必要があります。
 したがって、解除後、任意に退去しない場合は、裁判を起こすことになります。

1. 訴訟提起

 裁判を起こすには、裁判所宛に訴状その他の書類を提出します。

 日本には裁判所が多くあり、地域や分野、規模なども様々です。それでは、家賃滞納の裁判を行う場合の、訴状の提出先の裁判所がどこか。
 これは裁判管轄と呼ばれ、物件や相手方の所在地、請求する裁判の規模(金額)によりルールがあります。家賃滞納を理由とした明渡等を求める訴訟の場合、基本的には相手の所在地を管轄する地方裁判所と考えれば間違いはないです。

 相手が滞納しているのが自宅として利用している東京都港区の賃貸物件の場合、同区を管轄する東京地裁(霞ヶ関)に訴状その他の書類を提出することになります。

 提出すべき書類は、訴状、証拠説明書、証拠(内容証明郵便や預金通帳など)のコピー、添付書類(不動産登記簿謄本、委任状等)です。訴状や証拠などは、裁判所用と相手用を用意します。
 提出時に、印紙(数千円から1,2万円程度が多い。)や切手代(数千円)もかかります。

2. 裁判(民事訴訟)の審理

 大まかな裁判のスケジュールは次の通りです。便宜上、9月1日に提訴(訴状を裁判所に提出)した場合を考えてみましょう。

9月1日提訴(訴状を裁判所に提出)
9月8日ころまで裁判所による訴状審査(形式や請求内容が法令に照らして間違っていないかを確認)
9月10日ころ裁判所から原告代理人弁護士に初回期日の調整連絡、初回期日決定(例10/10)
9月12日ころ裁判所から被告住所宛に呼出状・訴状等の送付

もしも、被告住所宛に呼出状等の書類が届かない場合は、現地を調査して居住の有無を確認する場合もあります。

10月10日初回裁判(第1回口頭弁論期日)法廷で裁判が開かれます。

 裁判は争いのある部分があれば何回も審理をします。争いのある部分がなければ初回で終わり、次は判決が言い渡されます。

10月17日判決期日(第2回口頭弁論期日)法廷で判決の言渡しがあります。

 争いがない場合は翌週判決となることも多いです。争いがある場合の開廷の頻度は、月1回程度が多いです。

3. 判決

 上記の通り、提訴から最も早いと2ヶ月以内に判決が出ます。判決の内容(主文)は通常は次のようなものです。

1. 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の建物を明け渡せ

2. 被告は、原告に対し、180,000円及びこれに対する2021年7月26日から年14.6%の割合による金員を支払え

3. 被告は、原告に対し、2021年8月30日から第1項の建物明渡済みまで1ヶ月120,000円の割合による金員を支払え

4. 訴訟費用は被告の負担とする

この判決は仮に執行することができる

 まず、明渡の命令(1.)があり、次に未払家賃の支払いの命令(2.)があります。
 そして、損害金(3.)です。これも家賃のようなものですが、法律上、解除後の家賃相当金は(不法占拠の)損害金といいます。

 解除日の翌日(上記の例では2021年8月29日に解除したので同月30日)からは1ヶ月いくら、という計算方法です。

 この例では、解除後明渡しまでは家賃倍額の損害金を支払う、という契約上の定めがある前提で、月額120,000円(家賃60,000円の倍額)となっています。

4. 判決送達、確定

判決は被告(借家人)に送達されます。その後、2週間以内に控訴がされなければ確定です。

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