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概要
本件は千葉市中央区道場の国道51号線沿いの住宅街に建つマンションの1室の事例です。
借家人は1982年(約40年前)から、この部屋を利用していました。借家人の兄が連帯保証人でしたが、その兄は2006年に死亡し、妻と2人の子が相続人でした。
2000年ころから滞納が始まり、2012年には、家賃52000円のうち、40000円のみ支払う状態となり、さらに金額は減っていきました。
家主はご自身で内容証明等の督促はしていたものの、神奈川県内に住んでいたこともあり、滞納額が150万円を超えるまで、明渡しには至らないままでした。これ以上の放置はできないということでご依頼となりました。このとき、滞納額は29ヶ月分に及んでいました。
賃貸借契約
地域 | 千葉市中央区 |
家賃 | 52,000円(152万円・約29ヶ月分滞納) |
状況 | 7~8年前から勝手に徐々に減額(5.2万→4.6万→4万→3万) 固定資産税が支払えなくなりそうな水準に |
備考 | 連帯保証人は借家人の実兄もすでに故人 滞納開始から何も連絡せず |
経緯
2012年ころ | 家賃の支払いを一方的に減額してくる |
2019年06月05日 | 最初の相談 明渡しまたは減額賃料での賃貸借契約更改の検討 |
2020年04月27日 | 再度のご来所・ご相談・ご依頼 |
2020年04月30日 | 借家人に内容証明郵便を発送(催告及び解除通知) 連帯保証人の相続人調査 提訴準備(印紙発注・切手準備・訴状等作成・証拠書類等準備・住民票等確認) |
2020年05月28日 | 保証人の相続人判明 相続人に対して請求書を発送も、反応なし |
2020年06月03日 | 横浜地裁川崎支部に提訴(借家人及び保証人の相続人3名) |
2020年08月21日 | 借家人らの代理人弁護士から連絡あり 具体的な交渉開始 |
2020年08月26日 | 第一回口頭弁論期日(不出頭) |
2020年10月22日 | 第二回口頭弁論期日(借家人ら代理人が出頭) |
2020年12月08日 | 任意退去 明渡し完了 |
2020年12月14日 | 合意書及び解決金の受領 訴訟取下げ |
対応結果
催告・解除の内容証明には応答がなく、速やかに提訴しました。
すると、借家人は数年前から入退院を繰り返し、貯金も底をついたため生活保護の申請をしている、とのことでした。
本件では、一応は契約書に連帯保証人に実兄の名があります。
しかし、連帯保証人の署名の筆跡が借家人のそれと酷似しており、認印も借家人と連帯保証人で同一でした。当然ながら、連帯保証人の印鑑証明書もありません。
したがって、借家人が、兄の名を保証人欄に勝手に記載した可能性が相当程度あり、裁判では保証人の相続人への請求は困難な状況でした。
明渡義務が明らかな中、金銭請求の争いで裁判が長期化すると、結局、家主の損害が拡大します。
そこで、滞納分の回収を断念して早期退去を追及する方針としました。
裁判は継続したまま、任意に退去を完了してもらい、その後、滞納額の一部の支払いと引き換えに裁判を取り下げることを合意しました。
ポイント
本件のポイントは2点あります。
第一に、借家人の資力(財産)が乏しい場合に、金銭的回収に拘る余り退去が遅れると、損害が拡大してしまいます。したがって、そうした場合は早期退去を最優先とすべきです。
第二に、保証人による支払いは、滞納家賃の回収としては最も有効な形ですが、それも保証人による保証がその意思に基づくものであり、かつ保証人に資力がある場合に限られます。
本件のように、勝手に署名した、という可能性を否定できない場合や、保証人が無資力である場合には、家賃回収は困難となります。
訴訟を2名に対して行うことは、1名の場合に比べ手続が増えるデメリットがあります(管轄などでメリットとなる場合もあります。)。事案によっては、保証人への請求をあえてせずに、賃借人のみを相手取って訴訟を起こすことが適切な場合もあります。
早期解決や回収の実効性には、専門的な判断、検討が不可欠です。お困りの場合は、まずは専門家である弁護士にご相談下さい。
弁護士の活動・費用
解決までの期間 | 明渡しまで相談から7ヶ月 |
回収額 | 100,000円(解決金のみ) |
弁護士費用 | 363,000円 (内容証明1.1万円、訴訟着手11万円、明渡報酬22万円、回収額の22%) |
実費 | 43,763円 |