家賃滞納解決の流れ ②督促

1 内容証明郵便(催告書・解除通知書)の送付

 滞納が継続して、2回目となった場合は、速やかに催告・解除通知を送りましょう。この通知には、大きく、次の3つの意味があります。

 第一に、法的手続としての意義です。解除には催告や通知が必要です。

 すなわち、契約を解除して部屋を返してもらうには、民法上、一度は家賃を払うチャンスを与えた、という事実が必要です。また解除するという意思表示が相手に伝わったという事実も必要です。
 事実は証拠で示しますので、裁判などの争いの場に備え、これらには証拠も必要です。

 内容証明郵便を用いて、「催告してチャンスを与え、しかる後に解除した」という事実を証拠として残すのです。

 第二に、強力に督促することができます。

 一般的に、弁護士でもない限り、内容証明郵便を利用する機会は多くありません。内容証明郵便は、郵便の内容の証拠化であり、裁判を予定している場合に利用するものです。借家人も、内容証明郵便を受領すれば相手(家主)が本気であると認識します。
 そうすると、何とかお金を工面して、支払をしてくることが期待できます。

 第三に、相手の所在を確認することができます。

 家賃を滞納する借家人は、場合によっては夜逃げをしたり、事実上転居したりしていることもあります。追跡可能な郵便を送ることで、所在に関する情報が得られる場合があります。

 例えば「あて所に尋ねあたりません」となれば、その場所にいない(別の人が住んでいたり、空き家であったり)可能性が高いです。受け取らなくても、不在票により再配達や窓口受領がなされれば、その場に住んでいることが予想されます。別の郵便局に転送されれば、概ねの地域などもわかります。

 このように、内容証明郵便による督促は非常に重要です。
 例えば、7月分、8月分が続けて未納となって8月に入った場合は、8月初旬には内容証明郵便を送るのがよいです。弁護士にご依頼いただき、滞納の内容が確認できれば、相談の日に即日で、オンラインにより内容証明郵便を発送することも可能です。

2 期限経過

 内容証明郵便を送る際には、滞納の総額と支払期日を記載します。支払期日を経過すると解除とする旨も記載します。

 例えば、家賃6万円で2ヶ月分の滞納であれば、8月5日付の内容証明郵便で「8月11日までに12万円支払わないと契約に基づき解除する」と記載します。

 期限までの日数については特に決まりはありませんが、既に本来の支払期限は過ぎているので、通常は猶予期間として到達から5日もあれば十分でしょう。

 内容証明郵便を書留で送ると、相手が受け取らない場合もあります。同時に普通郵便や特定記録郵便でも、同じ内容の文書を送るとよいでしょう。

 期限が経過したとき、法的には賃貸借契約は解除により終了します。つまり、それ以降の利用は、「不法占有」となるわけです。

 なお、滞納額が3ヶ月分ないと解除できない、という意見をよく聞くかも知れませんが、必ずしも正しいとは限りません。
 たしかに、概ね3ヶ月分という滞納額が、裁判例などから目安となることはありますが、必ずしも常に3ヶ月分の滞納が解除に必要というわけではありません。賃貸借契約上の解除条件がより少ない場合も多いです。解除通知自体は、契約書等の記載に則って送ってしまってかまいません。

 仮に裁判で相手が解除の有効性を争わなければ問題ありませんし、裁判を起こしているうちに3ヶ月分になりますので、訴状の記載を工夫すれば、訴状等により、再度解除を通知することも可能です。

 相手が解除の有効性を争うのであれば、それは滞納分家賃の支払をすることが前提です。それはそれで解決に資すると考えることもできます。

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