債務不履行の有無の判断において、保証会社による代位弁済を考慮すべきではない、とされた事例

大阪高裁平成25年11月22日判決

 本判決は、賃借人の家賃滞納後に保証会社による支払いがなされていた件で、保証会社が代位弁済(代わりに弁済)しても、賃料不払いという事実は変わらない、という判断をしたものです。

契約内容及び事実経過

 本件は、家賃・共益費等月額78,000円の賃貸住宅の事例です。借家人は、保証会社との間で家賃等について保証委託契約を結んでいました。

 2011年12月の契約後、数ヶ月後の2012年2月から支払いが遅れ始め、結局、同年4月から8月まで毎月78,000円を保証会社が毎月代位弁済しました。合計は39万円です。

 そして、賃貸借契約は解除されたとして、家主が明渡しを、保証会社が支払いを求めて提訴しました。

 なお、保証委託契約においては、訴訟提起時の滞納額に加え,月額賃料等の10ヶ月分相当額を上限として保証する旨、定められていました。

 本件は、滞納の事案としては一般的です。実際に、一審の裁判所(神戸地裁尼崎支部)は、原告らの請求を簡単に認めています。

論点

 本件の論点として、保証会社により代位弁済がされ、家主自身においては、滞納分の回収ができている場合に、当該代位弁済の事実が、除権の行使の根拠たる債務不履行の有無に影響するか、というものがあります。

 要は、家主は保証会社から支払いを受けて損をしていないから、解除はできないのではないか、という問題です。

裁判所の判断

 裁判所は、控訴人(借家人)の主張をあっさりと退けて、次のように述べています。

 「賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである」。

ポイント

 高裁の説明は、至極もっともではあります。

 つまり、「家賃滞納があったら解除できる」ということは「家賃の支払いがなされれば解除できない」ということですが、保証会社による支払いは家賃の支払いではなく、あくまでも保証の履行(実行)に過ぎず、別物ということです。

 たしかに、家主の金銭的な損得だけに着目すれば、保証によって損失は補填されます。しかし、借家人の不払いの継続という点が重要で、そのような借家人との信頼関係がなくなるのはやむをえません。

 これは、保証会社ではなく、保証人からの支払の場合も同様のことが言えるでしょう。

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