家賃滞納解決の流れ ④強制執行

 明渡を命ずる判決が出されても、入居者が自分から出ていかない場合、強制退去(強制執行)が必要となります。また、仮に日常的には居住していなくても、残置物がそのままで、占有状態ということになれば、やはり強制執行をして撤去する必要があります。

1. 強制執行申立て

 取得した判決書をもとに、裁判所に強制執行を申し立てます。

 申立前の準備として、判決を言渡した裁判所に対し、判決書に「執行文」という書類を付けてもらい、かつ送達証明書(判決が相手に送達された旨の証明書)などの必要書類も準備します。
 何が必要となるかは、事案や判決の主文によって異なります。

 申立先は、物件所在地を管轄する地方裁判所の執行官室です。判決を出した裁判所と同じ場合もありますが、違う場合もあります。強制執行申立書・判決書・送達証明書等の必要書類を提出します。

2. 初回訪問(催告)

 強制執行で中心的役割を果たすのは、裁判所の執行官です。

実際に強制執行で中心となるのは裁判所の執行官です。

 申立書を受理した裁判所は、担当の執行官を決め、同時に申立人に対して執行費用の予納を求めます。東京では通常の場合、65,000円程度です。

 特に書類に不備がなく、予納金の納付も済んだ場合、担当執行官と申立人(代理人弁護士)が打合せを行い、1回目の訪問日時を決めます。1回目の訪問の手続を催告手続といいます。

 催告の際には、撤去業者(執行補助者といいます。)も執行官と共に訪問に立会い、内部状況を確認します。占有状況、残置物、搬出経路等を確認し、撤去に進んだ場合の撤去費用、必要人員等を見積もります。

 相手が在室していれば、相手に手続について説明します。また、その場で関係者の日程を調整し、次の訪問日を決定して相手にも伝えます。
 相手が不在であっても、解錠技術者により鍵を開けて室内の確認をします。この場合は訪問した旨と次回訪問日を記載した書類を置いておきます。
 室内の壁には、公示書と呼ばれる書類を貼り付けておきます。これを勝手に剥がすと処罰の対象となります。
 2回目の日時は原則として1ヶ月以内です。例えば1回目が10月10日だった場合、11月5日10:00から2回目(撤去)などと決まります。

3. 2回目の訪問(断行)

 1回目の訪問の後、猶予が概ね1ヶ月ありますので、債務者が自ら引越の手配をして退去する場合もあります。
 しかし、相手が任意退去することなく、2回目の予定日を迎えた場合、いよいよ強制執行を実施します。室内の動産類の撤去を行うとともに、相手が在室する場合は退去させます。

 トラックと作業員が手配されて作業を行いますので、知らない人が見たら通常の引越と思うかも知れません。実際に共通する部分も多いですが、次の点が異なります。

 まず、相手は結局任意には退去しなかったのであり、搬出に協力的ではありません。本人は退去の意思があっても荷物量が多すぎて、手を付けられなかった、という場合もあります。いずれにしても、室内は全く片付いていないことが大半です。
 また、判決に基づく強制執行は、通常の引越に比べると短時間で行います。ワンルームであれば1時間程度、戸建てであっても、通常は2~3時間程度で終わることが多いです。片付いていない状態から短時間で終わらせるために、作業員は多数動員されることが多いです。10人以上ということもよくあります。

 撤去した動産類は、即廃棄されるか、倉庫に運んで保管します。

 いずれにしても、撤去後すぐに物件は所有者の管理下に戻りますので、鍵の交換やリフォームなどを行うことができます。 

倉庫保管の例

4. 保管品の処分

 撤去した動産類は、即廃棄となる場合もありますが、一定期間保管される場合もあります。主に、倉庫等に運ばれ、1ヶ月程度、保管されます。
 入居者に引き取りを打診しますが、引き取りがない場合は、廃棄します。

 保管品の処分が行われると、一連の建物明渡の手続きは終了します。

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