迷惑行為(近隣居住者を誹謗中傷、うめき声を上げ叫ぶ、ドア開閉の騒音)を理由として、賃貸借契約の解除を認めた裁判例

東京地裁令和3年11月17日判決

 本判決は、東京都内の共同住宅における賃貸借契約において、賃借人が迷惑行為を繰り返し、再三の警告を受けてもやめなかったため、家主との間の信頼関係は破壊されているとして、契約解除及び退去義務を認めたものです。

契約内容と迷惑行為

 本件の物件は、家賃6万円のマンションであり、賃借人2012年6月に入居して以降、1年毎に契約を更新して居住を継続していました。

 そして、5年後の2017年6月には迷惑行為を繰り返すようになっていました。内容は、次の通りです。

  • 近隣居住者を名指しで誹謗中傷する言葉を叫ぶ
  • わけのわからないうめき声を上げながら叫ぶ
  • 玄関ドアを何度も開閉させ,大きな物音を立てる

 なお、賃貸借契約書には「共同生活の秩序を乱す行為があったとき」は無催告解除ができる旨の規定がありました。

交渉経過 

 入居者側は迷惑行為を否認する一方、上階の部屋の床に穴が開いており、そこから大麻の匂いが漂ってくるから苦情を述べには行った、などと述べていました。しかし、上階の部屋は空室でした。

 2017年6月、管理会社は、迷惑行為を行った入居者に対して誓約書を書かせました。迷惑行為を行わないことや、病院で治療を受けること、誓約に違反したら法的措置に異議を述べないこと、などです。

 しかし、迷惑行為はなくならず、入居者は昼夜問わず、壁等を叩く・大声をあげて騒ぐ、などしていました。

 そこで、2018年6月には、家主が迷惑行為を中止するよう求める通知書を提出しました。

 それでも入居者は迷惑行為をやめず、近隣居住者からの苦情も多数寄せられるようになりました。そこで2020年9月、2021年2月にも、通知書により迷惑行為の中止を求め、法的措置も辞さないと警告しました。

 それでも迷惑行為がやまないために、家主が退去を求めて訴えを提起しました。

裁判所の判断

 裁判所は、管理会社の担当者や近隣住民の証言や、苦情の事実などから、迷惑行為を認定し、近隣居住者に対する精神的苦痛や相当な迷惑を被らせていることを理由に、契約解除条項に該当するとしました。

 そして、度重なる警告を無視して迷惑行為を継続したことから、訴状が到達した時点で、信頼関係の破壊があったとし、入居者に対し退去を命じました。

ポイント

 入居者が騒音や奇行などの迷惑行為を行うとして、家主から相談を受けることは少なくありません。本判決は迷惑行為があった際に契約解除が認められた事例として参考となります。

 迷惑行為がある場合は、迷惑行為があったこと、それが特定の入居者によるものであること、中止するよう相手に警告を与えたこと、などを、証明する必要があります。

 防犯カメラやボイスレコーダーでの記録、近隣の証言の確保、内容証明郵便の活用などにより、確実な証拠を残すとともに、早めに相談されることを勧めます。

 

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